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2012-05

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2つの芸術/ジェフ・クーンズの絵画について(3) - 2012.05.25 Fri

どなたかのコメントで、ジェフクーンズの絵画は、どうしても優れた絵画に見えないというご意見をいただきました。

そのお気持ちはよく分かりますが、彦坂尚嘉の芸術分析では、ジェフクーンズの絵画はたいへんに優れている芸術です。

今日の芸術状況は、二つ分かれていて、アメリカの上流階級を中心とした《象徴界》を含む高度な芸術の世界と、アジア・アフリカを中心とした一般性をもった分かりやすい芸術の世界です(ここでは《象徴界》は排除されています)。

もともと芸術には、《高度な芸術》と、そして一般性のある《分かりやすい芸術》の2つがあったのです。もともとと言っても、今のところ私が考えるのは、エジプト時代くらいからです。その前には、2種類の分裂は無かった。

ところがエジプト段階で、2種類に分裂した。

《想像界》《象徴界》の2つの総合性を持つ美術と、《想像界》だけの美術です。

さらに鎌倉時代/ルネッサンスの時代から、芸術は《高度な芸術》と、《分かりやすい芸術》に分裂して同時に出現するようになった。

その《分かりやすい芸術》の代表がジョルジョ・ヴァザーリが『画家・彫刻家・建築家列伝』で激賞したミケランジェロの彫刻や絵画です。

《分かりやすい芸術》が依拠しているのは、人間の《自然な態度》です。その《自然な態度》の基礎が《想像界》なのです。ミケランジェロの彫刻も絵画も《想像界》だけの美術になっています。

その反対の《高度な芸術》の代表はレオナル・ド・ダヴィンチや、ドナテロです。彼らが依拠しているのは《学問的な態度》です。そこには《想像界》《象徴界》《現実界》の3界の総合性としての美術が出現しています。

この2つの態度の分裂が、20世紀になるとさらに過激化します。そのことを記述しているのがオルテガの『芸術の非人間化』という本でした。モダンアートは、世間体アートの外部に出たのですが、そういう外部性がグリンバーグの言ったアヴァンギャルドでした。つまりアヴァンギャルドとキッチュに分裂したのが、1960年代までの芸術でした。

1975年から、芸術状況は、別の2つの分裂を形成するようになります。映画が分かりやすいのですが、クエンティン・ジェローム・タランティーノの映画と、ロバート・ロドリゲスの映画です。この2つは、非常に良く似ているのですが、タランティーノの映画が《高度な芸術》であるのに対して、ロドリゲスの映画が《分かりやすい芸術》なのです。

この2つの分裂は、美術では、ジェフ・クーンズと、ダミアンハースト(村上隆)として出現します。ジェフ・クーンズの美術が《高度な芸術》なのですが、ダミアンハースト(村上隆)は《分かりやすい芸術》なのです。

ジェフ・クーンズの《高度な芸術》は、《想像界》《象徴界》《現実界》《サントーム》の4界の総合性として成立しています。

これに対してダミアンハースト(村上隆)の《分かりやすい芸術》は、《想像界》《現実界》の2つだけで成立しているのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ジェフ・クーンズをキッチュで、下品な美術と考える人は、たぶんタランティーノの映画も下品なものとしてしか理解できないでしょう。

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New HIKOSAKA 彦坂尚嘉

Author:New HIKOSAKA 彦坂尚嘉
彦坂 尚嘉(ひこさか なおよし、1946年6月26日 - )は、 美術家。立教大学大学院特任教授。日本建築学会会員。日本ラカン協会会員。気体分子ギャラリーを主催。

【著書/出版】『反覆/新興芸術の位相』(74年、田畑書店)、『死に対抗する力』(91年、ギャラリーKURANUKI)、『リノメランコリア』(94年、岡部版画工房)、共著『リベーションの現場』(05年、彰国社)、共著『メディアと精神科医』(05年、批評社)。共著編『皇居美術館空想』(08年9月朝日新聞社)。『彦坂尚嘉のエクリチュール』(08年、三和書籍)、共著『3・11万葉集 復活の塔』(2012年、彩流社)

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