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Aさんの個人的リクエストによる芸術分析(3) - 2011.11.15 Tue

Aさんに、作品がデザインエンターテイメントであるという指摘をしたところ、個人メールで、自分の一番描きたかったと言う作品シリーズの画像を送ってきてくれたのですが、これが何と《真性の芸術》でした。しかも《超次元》?《第6400次元》の作品だったのです。

ところが、これらの作品は、画廊にもコレクターにも不評で、お蔵入りになっているとのことです。

彦坂尚嘉が評価する《真性の芸術》作品というものが、いかに一般には不評であるかと言うことがわかります。これはしかし、歴史的にも芸術が不評であったという過去の例、たとえば写楽の絵が、当時の江戸庶民には不評であったというような形で事実としてあることなのです。

長谷川祐子さんが主張するようにアートとデザインの遺伝子が入れ替わったのではなくて、もともと私的な表現である芸術というのは、社会の中では《公私混同するな!》として、忌み嫌われるものなのです。

もともと人間はデザインが好きなのです。特に下層の大衆は、デザインが好きなのです。

しかし今日では写楽は大衆にも好まれるものになっています。
なぜなのか?

それは写楽が描いた役者を、今日の大衆が知らないからです。つまり生の情報が無くなっているからです。

つまり作品が古くなって骨董化していくと、その作品を生み出した社会環境から作品が切り離されていくので、作品そのものが自立していないと、成立しなくなります。

つまり江戸時代に描かれた作品を見ているときの社会的通念が失われると、写楽の作品は、自立して見えるようになるのです。

私たちは社会常識や社会通念の中で、今日の作品を見ています。しかし50年後には、今日の社会通念は無くなるのです。残っているのは作品だけです。その時の作品の見え方は、今日とは違って見えるのです。

時代が変わって、違う社会通念で見たときに、それでも良い作品として見えるのものが《真性の芸術》です。

つまり長谷川祐子さんが推薦するような美術作品の、全部だとは思いませんが、かなりの量の作品は、魅力を失うはずです。

しかし、それは長谷川祐子さんに限ったことでは無くて、私も含めて、目利きというのは限界があります。グリンバーグですらが、芸術判断を間違えているものが多くあります。特にカラーフィールド・ペインティングは失敗です。私自身の判断も、後生から見れば、愚かな誤りに見えるでしょう。

ことほどさように、芸術の判断は難しくて、デリケートなものなのです。だから面白いと言えます。この危険な判断作業に、果敢に挑んでいくのか、それから逃避するのかで、ずいぶんとちがったものになるのです。

芸術判断を避けて逃避すると、苦しみが生まれます。

芸術は、人間が孤独に個人として死んでいくという事に深く関わっています。ですから、奇妙にも、芸術が理解できないと言うことの苦しみは、深いのです。
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New HIKOSAKA 彦坂尚嘉

Author:New HIKOSAKA 彦坂尚嘉
彦坂 尚嘉(ひこさか なおよし、1946年6月26日 - )は、 美術家。立教大学大学院特任教授。日本建築学会会員。日本ラカン協会会員。気体分子ギャラリーを主催。

【著書/出版】『反覆/新興芸術の位相』(74年、田畑書店)、『死に対抗する力』(91年、ギャラリーKURANUKI)、『リノメランコリア』(94年、岡部版画工房)、共著『リベーションの現場』(05年、彰国社)、共著『メディアと精神科医』(05年、批評社)。共著編『皇居美術館空想』(08年9月朝日新聞社)。『彦坂尚嘉のエクリチュール』(08年、三和書籍)、共著『3・11万葉集 復活の塔』(2012年、彩流社)

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