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3.11以後の新しい芸術教育の輪郭 - 2011.07.10 Sun

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3.11以降の状況の中で、若いアーティストたちが、制作する必然性を失っているという話を数カ所から聞いています。3.11以降に、、何のために作品をつくるのか? いままでやって来た事の意味を完全に見失ってしまって、これから何を創るのかも見失ってしまっている若いアーティストが多いというのです。震災の現地に行ってボランティアをやる様な事はできたとしても、美術作品をどのように創って行ったら良いかが分からなくなっているというのです。

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3.11以前にあった、多くの人が考える共通の高度消費社会の思考フィールドが、壊れたのです。

別のところからのうわさ話ですが、某美術館の館長が、3.11以降不安がっているという話です。終息しない福島原発事故は、身の丈主義で生きて来た多くの日本人には、想定外の事故であり、このような破局を前提には、美術というものを考えてこなかったのです。むしろ逆で、破局の無い、平和で安全で、快楽に満ちた天国のような時代がそれまでの世界でありました。美術の目的もまた幸福であることが最大の基準で、行為の基準を幸福におくような幸福主義の時代でありました。

幸福主義

 
3.11以前というのは、1991年から20年間にわたってアメリカの「根拠なき熱狂」が吹き荒れて、過剰消費が世界中をおおっていたのです。過剰消費という満ち足りた幸福な世界。物質的な豊穣さの中での永続的な幸福主義の世界という高度消費社会のユートピアの状況、こういう動きの台頭に合わせて村上隆が台頭し、これに続いて奈良美智、そして会田誠がスターに駆け上りました。これ以降、日本でもハイリスク・ハイリターンの合い言葉で、若い未熟な表現がもてはやされたのです。

村上隆


この「根拠なき熱狂」の中で、《近代》という時代が磨き上げた絵画や彫刻、さらには芸術の枠組みは忘れられ捨てられて、自然発生的とも言えるイラストや人形、さらに工芸や手芸に基盤を置く表現が台頭したのです。新進の美術評論家・松井みどり氏が押し出したマイクロ・ポップのアーティストたちです。が、しかしこれらの若い表現は、時間がたつとその未熟さと底の浅さを露呈させて力を失い始めていました。

マイクロポップ


2007年の世界金融危機の勃発にによって世界経済が不調化し、さらに「アラブの春」による石油高騰が世界経済に影をなげかけ、さらに2011年3月11日の東日本大地震と福島原発の事故によって、ここ20年の表現の基盤であった「根拠なき熱狂」が終わって、今出現しているのは「破局の時代」なのです。

アラブの春

世界中で地殻変動による地震と津波が起き、経済が不安定化し、政治が混迷を深めて不幸な時代が始まったのであります。

「破局の時代」への転換の中で、不幸を前提にして芸術作品は創り得るのか?
こういう破局状況の中で、美術や芸術、アートを教育する事は可能なのか?

私は可能であるし、逆に、このような不幸な時代こそが、美術や芸術という技術の成立の一つの根拠であると考えています。つまり悲劇の時代を乗り越える技術の一つが芸術なのです。

さらに言えば、3.11は、単なる原発事故であるのではなくて、日本社会が中心部分から崩壊し、溶解するという事態であって、それは美術そのものの変革にまで波及するものなのです。

以下は新聞にあるベストセラーの書籍です。
『日本中枢の崩壊』は16万部のベストセラーです。

日本中枢の崩壊

日本社会の中枢は、崩壊を始めているのです。それは今日の政治の混迷を見ていても、明らかでしょう。
次の本は『日本中枢の崩壊』の著者の対談です。

日本が融けて行く

日本が融けて行くというのは、リアルな言い方です。
別の方もまた、日本人の溶解を指摘しています。

溶けてゆく日本人

もう一つ、現在の日本の現状を、第三の敗戦と言う堺屋太一の本も出ています。

第3の敗戦

こうした日本の崩壊の中で、アーティストは、どのように美術作品を創って行ったら良いのか?

2010年代の破局の時代の本質は、福島原発事故と深い関係があります。つまり原子爆弾を開発した近現代の自然物理化学こそが、還元主義の単純系科学であったのですが、この単純系科学の時代であった近現代が終わってしまったのです。

原爆


つまり産業革命を推進した近代科学技術が、蒸気機関をつくって日本に黒船として来航して、日本は明治維新を成し遂げて近代化を推進してきました。この明治維新以来の近現代化の時代と、それを推進して原発を成立させた自然物理科学の単純系科学が、破綻して終わったのです。

黒船


地震や津波も大きな災害でしたが、これに連動して起きた福島原発事故は、日本の歴史においても過去に例を見ない様な規模での破綻であって、亡国、さらには日本民族滅亡の事態であります。しかも福島原発事故は現在も終息をしていない状態であって、放射能は垂れ流しで、放射能汚染は蓄積され続けています。福島原発の第一号機はメルトダウンどころかメルトスルーしていて、約100トンの燃料が地中に下降している状態で、高濃度の放射の流出が地下水汚染として続いていて、海洋汚染となって継続するという、将来の地球の海全体が死に瀕する可能性すらある事態が進行しています。しかもこの事態に東京電力も日本政府も沈黙していて、対策はまだ取られていません。

つまり福島原発事故というのは、明治維新以来の日本の近現代社会と、単純系科学信仰の、底抜けの破綻なのであって、終息させることには100年を超える時間を要するようなどうしようもない破局なのです。

この近現代物理化学の破局に取って代わるように、新しい時代が、複雑系の科学と情報科学の時代として始まってきていたのです。それは近現代的な国民国家の時代ではなくて、グローバリズム化の新しい中世とも言うべき時代なのです。この新中世の時代の美術へと、時代は変貌して行くのです。

美術の基盤を根底的に改める大きな時代変化なのです。

情報化社会の芸術が、日本において真の意味で始まったのが3.11であり、だからこそ、芸術教育の再編がなされ、新しいアート教育として、このeラーニング/アートスタディーズ6400の通信教育を立ち上げて行きたいと思います。

これまでの日本の美術状況は《第6次元 自然領域》でありました。これが破綻して《第6400次元》までの世界が出現したのが3.11の惨事でありました。この《第6400次元》の惨事は、素早い復興で再びふたをしてみえなくなるような形では終息出来ないのが現在です。

ですから《第6400次元》をまず、美術の基盤とすることから初めなければなりません。

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New HIKOSAKA 彦坂尚嘉

Author:New HIKOSAKA 彦坂尚嘉
彦坂 尚嘉(ひこさか なおよし、1946年6月26日 - )は、 美術家。立教大学大学院特任教授。日本建築学会会員。日本ラカン協会会員。気体分子ギャラリーを主催。

【著書/出版】『反覆/新興芸術の位相』(74年、田畑書店)、『死に対抗する力』(91年、ギャラリーKURANUKI)、『リノメランコリア』(94年、岡部版画工房)、共著『リベーションの現場』(05年、彰国社)、共著『メディアと精神科医』(05年、批評社)。共著編『皇居美術館空想』(08年9月朝日新聞社)。『彦坂尚嘉のエクリチュール』(08年、三和書籍)、共著『3・11万葉集 復活の塔』(2012年、彩流社)

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